“アーチ”のデザインアイコンがいざなう非日常空間
高級クラブの競合の多い大阪・北新地という歓楽街で、どのようにすればゲストにお店の印象を残せるのか、覚えていただけるのか? この店舗では、ゲストに対してストレートで素直でより強い印象を残すために、店名である「club arch」の“アーチ”から着想を得てデザインしました。まず、エレベーターが開いた瞬間、アーチ型のパンチングメタルがゲストを出迎え、メインホールへと続く回廊がワクワク感を増幅させます。左右のホールに挟まれたメインアプローチにも、アーチを連想させるパンチングメタルを施し、エントランスとの繋がりを持たせています。 このアプローチは、時にはキャストが歩くランウェイとなり、パンチングの穴からシルエットが見え隠れすることで期待感を煽ります。ホール壁面には、三角アーチ形状のパンチングメタルの柱が整然と並んでいます。 パンチングメタルは、一般的には建築用の内外装材で、いわば男性的ともいえるハードで硬くて冷たい印象。そのような素材に真鍮色をまとわせて使用することで、逆にキャストを柔らかく華やかに魅せ、引き立たせることができると考えました。また、間接照明の効果も相まって、 より艶やかでエレガントな空気を作り出します。 そして、このパンチングの穴に1箇所だけハートマークが隠れています。お酒の酔いがまわる前に、探してみるのも面白いかもしれません。一部壁面には、黒・グレー・シルバーが混在した特殊塗装を施しています。これは、パンチングメタルそのものが、決まったサイズの穴の配列でできているがゆえに、空間が綺麗な印象にだけ偏ってしまうのを懸念し、空間に幅を持たせるため、有機的な模様を描いたものです。その模様は「男性のお誘いを煙に巻く」という“煙”のイメージをあらわしています。2部屋あるVIPルームは、それぞれ違った曲線(アーチ)を用いたオブジェを連続的に配置することにより、ダイナミックで華やかな空間を演出しました。随所に楽しんでいただきたいという思いを詰め込んだ、洗練された大人の空間で、非日常の時間を是非味わってみてください。(吉本 宗/VOIGER)
「club arch」
所在地:大阪市北区曽根崎新地1-3-8 ぐらんぱれ壱番館 3階
オープン:2025年3月5日
設計:VOIGER 吉本 宗
床面積:276.4㎡
客席数:103席
Photo:adhoc 志摩大輔
【内外装仕様データ】
〈エントランス及びホール〉
壁面:LGS組みPB下地クロス貼り+特注パンチングメタル 一部特注塗装
天井:LGS組みPB下地EP塗装
床:タイル貼り 一部ロールカーペット貼り
〈VIPルーム〉
壁面:LGS組みPB下地タイル貼り 一部特注パネル
天井:LGS組みPB下地EP塗装 一部特注パネル
床:ロールカーペット貼り
吉本 宗/VOIGER
1980年奈良県生まれ。2005年株式会社グラマラス入社、森田恭通氏に師事。2009年VOIGER設立。国内外の専門誌やデザインサイトに掲載多数。