&KASEN

老舗酒造場の歴史と土地性を体感する建築空間

 

200年の歴史を持つ東京の老舗酒造、東京都福生にある「田村酒造場」の隣地に、日本酒を五感で楽しめる体験型施設を設計した。創業当時、敷地内に掘り当てた井戸は酒造りに最適の水質であり、「正にこの水は良き泉よろこぶべき泉なり」として酒の名を「嘉泉」と名付けたと伝えられる。田村酒造場の正門は、真西から北へ7度振れた西北西を向いており、西に流れる多摩川を超えて奥の小高い大澄山が視界に広がる。その奥には奥多摩、更には多摩川源流に正対するように正門が据えられている。それは何やら日本酒の元となる恵みの山々に礼拝するかのような振る舞いに感じられた。
その正面に建てられる新しい施設「&KASEN」は、レストランと日本酒を扱う物販店舗にて構成される。それらを正門からの軸線の左右に配置し、その2つを覆うように大きな屋根をかけた。そして、その屋根の下に源流の山々へと向かうトンネル状のエントランスを設けている。その通路に面する両側のガラス面には柱を設けず、屋根が低く落ちてきている北東と南西の対角の角をコアとして、両端で大きな屋根を支えており、棟を21m飛ばしている。そのため重量感のある低い大屋根に対して、軽やかな抜けと屋根下の連続性が実現された。
エントランスを抜けた先には水盤を持つ大きな庭園が配置され、レストランやバーには借景を活かした客席を設けている。庭園の奥に広がる日本の豊かな水源を感じてほしい。(山路哲生建築設計事務所

 

 

「&KASEN」
所在地:東京都福生市福生609
オープン:2026年7月1日
プロデュース:電通ライブ 浜本悟史(総合プロデュース) 布施太郎(クリエイティブディレクション) 池島萌(ディレクション)
建築設計:山路哲生建築設計事務所 山路哲生 梶並直貴 榊原佑基、電通ライブ
構造設計:yAt構造設計事務所 森部康司 須藤崇 安田紗知子
設備設計:森村設計 森村 剛 澤村晃司 笹生龍誠 山口真史 阿部公香
造園デザイン、施工:緑演舎 大山雄也 槇田法子 福岡伶馬
施工:シグマ建設 小野 猛 福井良太
電気設備施工:内村電気 久保英樹
機械設備施工:東眞水道工務店 白石欣胤
ブランディング、内装デザイン:FAB 布施太郎 堀智 映 石丸 海
グラフィック、WEB、空間デザイン:加藤花菜 椎名帆のか
映像制作:奥田貴将 秦レンナ(コピー) 鯉江奈々(スチール)
内装工事:電通ライブ 施工協力/泉宣宏社
内装監理:電通ライブ 田村正行
客席数:レストラン/24席 個室10席 バー/10席
床面積:敷地面積942.98㎡ 建築面積564㎡ 延床面積427.47㎡
Photo:OFP 長谷川健太

 

【内外装仕様データ】
床:磁器質タイル仕上げ(PL600-D6/織部製陶) 捨て貼り合板 パーティクルボード 鋼製床組
壁:塗り壁仕上げ(ジョリパットネオ JQ-650 BK 玉石アンティークストーン/アイカ工業) LGS組みPB下地多摩産スギ材準不燃処理手斧仕上げ板張り LGS組み合板下地版築塗装
天井:多摩産不燃処理スギ材両側メス実加工重ね貼りの上ウレタン塗装 捨て貼り合板
家具・什器:物販八角形展示台/多摩産スギ無垢角材 カウンター什器/天板・多摩産スギ集成材 腰壁・多摩産スギ材手斧仕上げ 版築塗装 テーブル/多摩産ヒノキ無垢板材 バーカウンター/天板・多摩産スギ無垢板材 腰壁・多摩産スギ手斧仕上げ板張り 洗面台/天板・人工大理石 キャビネット・メラミン化粧板

 

山路哲生/山路哲生建築設計事務所
1980年香川県生まれ、芝浦工業大学工学部建築学科を卒業後、Architect Christian Karez、横浜国立大学工学府社会空間システム学科建築学コースを修了。SAKO建築設計工社、隈研吾建築都市設計事務所 主任技師を経て、2015年に山路哲生建築設計事務所を主宰。芝浦工業大学 非常勤講師。

濱本悟史/電通ライブ
芝浦工業大学工学部建築学科卒業を卒業。電通テックに入社後、現在、電通ライブにて空間プロデューサーとして建築・施設開発のバックグラウンドを軸に、飲食・物販・デジタル・ブランディングまで領域を横断し、予算管理を含めた体験全体を一つのパッケージとして統合的にプロデュースしている。一級建築士。

布施太郎/FAB
1974年東京都生まれ、多摩美術大学建築学科を卒業後、デザイン設計事務所に勤務、2007年電通テック(現 電通ライブ)に入社。2025年退社後、クリエイティブユニットFABで活動開始。店舗プロデュースから企業ブランディング、地方創生など、クリエイティブディレクターとして高度な体験空間を創造している。

電通ライブ
1950年設立。2017年1月4日より現社名である株式会社電通ライブとして営業を開始。企業コミュニケーション活動においてブランドの価値をより高め、生活者とのエンゲージメントを深める基点となるイベントやスペースを中心としたリアルな体験価値の創造に取り組む。

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