万平ホテル アルプス館

歴史あるホテルの格式を表現し軽井沢の自然と調和する空間

 

長野県の東部、軽井沢町の中心に位置する「万平ホテル」。明治初期、宣教師と学者である2人の外国人が、前身の旅籠“亀屋”を訪れたことをきっかけに、初代佐藤万平は積極的に西洋の文化とホスピタリティの流儀を取り入れた。その過程で和風旅館から西洋風ホテルへと徐々に姿を変え、今現在の「万平ホテル」へと改名を果たした。長い年月をかけ磨き上げられた和洋折衷の趣と、最高級のホスピタリティは、今日に至るまで、日本有数のクラシックホテルとして国内外様々なゲストの心を掴んで離さないものとなっている。
この度の大規模改修計画にて我々は、切妻造妻入の大屋根とハーフティンバーの外壁が象徴的なアルプス館の全面リニューアルと、併設されるバンケット棟の二つのエリアを担当した。アルプス館は、当時の建築家・久米権九郎による和洋折衷な木造建築のロビーを始め、浅間山や軽井沢高原などが描かれたステンドグラスと個性的な格天井が目を惹くメインダイニング、オーセンティックなバー、緑豊かで歴史的な逸話も多く残されているテラスカフェ、そして軽井沢彫りの木製家具や印象的な組子建具と、窓越しに見えるカラマツ林が居室と美しく調和するゲストルームなどで構成される。インテリアデザインにおいては、それらの格式高い伝統的設えをそのまま活かしつつも、周囲環境には装飾に頼らないモダンなディテールを一手間加え、丁寧に整えていく事で空間全体に普遍性を持たせ、この先の未来へと末永く継承させていく事を第一優先に配慮した。新築棟であるバンケットルームでは、軽井沢の自然の中を優雅になびく風をイメージした緩やかな曲線の意匠天井を設け、ランドスケープとの調和と万平ホテルの新しさを表現した。
創業以来からの伝統・精神を受け継ぎ、長年多くのゲストに愛され続けてきた「万平ホテル」という遺産は、これからも軽井沢のシンボルとして、その名と共に様々な歴史を築いていくこととなる。(藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW

 

 

「万平ホテル アルプス館」
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
オープン(リニューアル):2024年10月2日
設計:DESIGN STUDIO CROW 藤本泰士 久保田 諒 黒瀬俊英
床面積:アルプス館/1677㎡ バンケット棟/148㎡
客室数:12室
Photo:エスエス東京

 

【内外装仕様データ】
床:磁器質タイル貼り(アドヴァン) オーク材フローリング貼り(ボード) ロールカーペット(アキスミンスター/サンゲツ
壁:ホワイトオーク練付OSCL EP塗装(指定色) UBタイル(アドヴァン
天井:ホワイトオーク練付OSCL EP塗装(指定色) 木毛セメント板(指定色3色ランダム貼り) エイジング塗装(ファインFR工法IN メタリック仕様/エスケー化研
家具・什器:人造大理石(アップワード) オーク無垢材 スチール真鍮色 オーク材指定色ウレタン塗装

 

藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW
1983年、愛知県生まれ。10代から三重県に移り工務店に就職。現場作業員として様々な経験を積む。その後、名古屋のデザイン学校を卒業後、上京して2005年から株式会社スーパーポテトに勤務。2009年からハーシュ・ベドナー アソシエイツ(HBA) 東京オフィスに勤務。その他2社のデザイン事務所勤務を経て、2013年にDESIGN STUDIO CROW設立。現在は全国各地のホテルプロジェクトや高級業態の飲食店など、多くの商業空間を中心に手掛けている。

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