Goldwin 丸の内店

“地”と“知”の集積を素材とディテールで表現

 

自然が長い時間をかけて、風に晒されうみだす造形美である地層の「地」と、Goldwinが長年追求し培ってきた知識と知見の「知」の層が折り重なるコンセプト「『チ』の集積」を、丸の内店の空間でも展開しています。丸の内仲通りに面するファサードでは、縦に伸びる意匠で天井の高さを強調する竹の桟を採用し、内部空間を壁で分ける構成にすることによって、限られた空間を広く使えるよう企図しました。正面ウインドウとサロンには、京都店と同様に竹素材と桐素材を用いています。風に晒されても折れることなくしなやかにたくましく伸びる竹と、成長すると大木となる縁起の良い桐は、吉祥文様である桐竹鳳凰文から想を得ました。奥に配置したフィッティングとサロンを兼ねるスペースの壁面には目の詰まった美しい桐の柾目を配し、清浄な気配を引き立たせる緊張感のあるディテールで仕上げることによって、ブランドの信条でもある「Dedication to Detail(細部へのこだわり)」を表現しています。空間構成のうえでは、このサロンは使用時には落ち着いてプライベートな買い物を楽しむ部屋として機能し、カーテンの仕切りを外せば開放感のある空間を生み出します。
壁面に使用している黒皮鉄板は、鉄を焼成する際に自然に現れる表面の模様のゆらぎを「風」と見立て、時間の経過によって味わいを深くしていく素材として用いています。また、通りからの視線を集める中央の大きなカウンターテーブルの前には、縮小した自然の姿を表すように植物を活け込みました。日々変化する植物は、風に乗って外からもたらされるモノを受容し、それを栄養に育っていくブランドの姿を象徴的に演出しています。
聴覚からも風は感じられます。風に乗って空間全体へと行き渡る音をイメージし、オリジナルのスピーカーをデザインしました。スピーカー「ウコウク」は、三段の音を一点に集中することなく、同じ旋律を追いかけ重なり合う輪唱のようにどの場所へも穏やかで均質な「音の風」を届け、空間全体を豊かな響きで満たします。
時が刻む「地」の表情と、ブランドの常に進化を求める「知」の探求心が、空間を渡る「風」の気配によって一つに織りなされます。素材が語る時間の奥行きと、細部に込められた確かな意志が調和することで、ブランドの精神を伝え、訪れる人々の心に新たな風を吹き込み、時代と共に変化し続けるGoldwinの未来を表現することを目指しました。(新素材研究所

 

 

「Goldwin 丸の内店」
所在地:東京都千代田区丸の内2-6-1 ブリックスクエア1階
オープン:2025年6月21日
設計:新素材研究所
Photo:森山雅智

 

【内外装仕様データ】
床:花崗岩敷き 特殊ウレタンフォーム(ダイウレ)下地ハンドタフテッドカーペット(山形緞通
壁:AEP塗装 桐突き板パネル 鉄骨下地黒皮鉄クリア塗装
天井:AEP塗装
家具・什器:SUSバイブレーション仕上げ 晒竹 米ヒバ

 

榊田倫之
1976年滋賀県生まれ。建築家。2001年、京都工芸繊維大学大学院建築学専攻博士前期課程修了後、株式会社日本設計入社。2003年、榊田倫之建築設計事務所設立後、建築家岸和郎の東京オフィスを兼務する。2008年、現代美術作家・杉本博司と新素材研究所を設立。京都芸術大学客員教授、宇都宮市公認大谷石大使。杉本博司のパートナー・アーキテクトとして数多くの設計を手がける。2019年、第28回BELCA賞など受賞多数。著書に『素材考―新素材研究所の試み』(平凡社、2023年)、杉本博司との共著に『Old Is New 新素材研究所の仕事』(日本語版:平凡社、英語版:Lars Müller Publishers、2021年)。

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