HERMES GION-MISE
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大丸の創業300周年を記念した企画の一環である大丸京都店 祇園町家の建築工事の設計、及び第一弾として出店した<エルメス祇園店>のインテリアデザインを担当。敷地は伝統的な町並みが残る京都祇園の中心を通る花見小路沿いに位置し、茶屋・住居として使用されていた町家を改修し店舗として再生させた。
景観保全修景地区に指定されていることから、通りから見える建物外観は元の状態を維持している。住居として使用されていた既存の建物は間仕切られた小部屋、細い廊下、複数の坪庭により構成されていたため、建物の骨格は維持しながらも、いかにこれらの小さな空間をつなぎ合わせて店舗として機能させるかが求められた。そこで、分散して配置されていた坪庭を繋ぎ合わせて、正面通りより直接入れる屋外の「路地」として再構成し、1階の店舗空間をこの路地に沿うかたちで配置。レジ・フィッティングルームを西側に集約し、エレベーター・階段を東側に新設することにより、販売エリアとなる中央部分は間仕切りの無い1つの部屋となり、大きなガラス面と庇によって「路地」との連続を感じさせる空間とした。

1階の販売エリアには、日本の伝統建築で多く使われている「木組み」の技術を応用した什器を壁面沿いに配置。「木組み」は木自体に切り込みを施し、嵌め合わせていくことで組み上げる技術であり、釘や接着剤を使用しないことに特徴がある。50mm角の木材で組まれた什器は一見ランダムにみえるが、150mmピッチのグリッドのなかで構成されているため、解体して別の形状に組み替えることが可能となっている。<エルメス祇園店>が期間限定店舗であることから、終了後もまた別の場所・別のかたちで再利用ができるものとして、「木組み」の技術をつかうことを提案した。

壁面什器に囲まれた中央部分を中心に、店内は一定期間ごとに変わるイベントを行う前提での設計となっている。そのため、販売スペースの1面は調光・調色の機能を持たせた発光面とし、イベントによって空間のイメージを変化させることができる仕組みとした。
ギャラリーやラウンジとして使用される2階は、中央部分の梁が露出した屋根形状に沿った吹き抜けを設けた。配線ダクトが埋込まれた梁からは造作物を吊るすこともでき、多目的な利用が可能な空間となっている。
1000年を越えて工芸や芸能等の発展の中心であった京都は、今でも伝統文化が色濃く生きている。伝統と革新が共存する場所で、この空間が様々な新しい試みを発信するための「舞台」となることを目指した。

 

HERMES GION-MISE

所在地:京都府京都市東山区祇園町南側570番地8
オープン:2016年11月18日
床面積:212㎡
撮影:太田拓実
Designer:

鬼木孝一郎 ODS / 鬼木デザインスタジオ ○プロフィールへ