doors yamazoe

「doors yamazoe(ドアーズ ヤマゾエ)」は、農村の自動車整備工場を改装したカフェ&ギャラリーです。店主は広告デザイン会社を経営しており、デザインの体験と思想を伝える場にしたいとの思いがありました。そこで店主の社名「INtoOUT」から発想し、内と外・入口と出口・過去と未来などを空間のテーマとしました。INとOUTの間にあるもの、それは扉や窓です。その開閉により体験や機能を生みたいと考えました。扉や窓は空気や人が出入りするもの。一方で意識の区切りや人と風景を繋ぐものでもあると思います。扉や窓が新しい世界の入口として象徴的に存在することで、農村とデザインという異質な関係でも実体験により誰もが楽しめると考えました。
軒先には鋼管と壁を立て室内を広く確保しました。山や桜並木の風景を窓が切り取ります。小さな窓は採光と視覚効果により、人々に内外の関係性を意識させます。カフェでは鋼管を軸に扉が回転し、様々に空間のボリュームと余白を変化させます。扉を回転させることで、好きな居場所を見つけることができます。小さな窓は車窓であり、回転扉は自動車のシルエットをイメージしたもの。昔、修理のため出入りした自家用車や農業車の記憶を残像として表しています。ギャラリーでも扉の開閉が空間領域を変化させます。扉は商品や展示に応じた可動間仕切りであり、動線であり、敷居を跨ぐことで意識の区切りを生みます。工場の躯体や傷は極力覆い隠さず、引き立てるように新規をインストールすることで、過去は否定されず、歴史や物語をつなぐことができると考えました。
扉や窓が繋ぐもの。それは中と外、人と物、昔と今、農村とデザイン…。その行き来を楽しめる場所になったと思います。(鈴木文貴/やぐゆぐ道具店

 

「doors yamazoe」
所在地:奈良県山辺郡山添村峰寺123
オープン:2020年7月
床面積:194.6㎡
プロデュース:INtoOUT&Co. 長光宏輔
設計:やぐゆぐ道具店 鈴木文貴 岩田茉莉江
施工:正工房 長光正彦
撮影:西岡 潔

【内外装仕様データ】
床:コンクリート仕上げ
壁:木軸セメント板下地AEP塗装 木軸下地AEP塗装 一部既存スケルトン
天井:一部既存スケルトン


鈴木文貴/やぐゆぐ道具店
インテリアデザイナー。1978年千葉県生まれ。東京造形大学卒業。デザイン事務所勤務を経て、2012年独立。2018年に田んぼと茶畑の広がる奈良県山間部に拠点を移す。理念は「ものとものがたり」。土地・人の歴史や個性を探求し、空間に物語を吹き込む。2018年「BAKE CHEESETARTあべのハルカス店」にてDezeen Awards Retail interior of the year。2019年「堀内果実園グランフロント大阪店」にて日本空間デザイン賞BEST100。

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