TAIHU TOKYO

台湾のクラフトビール専門店「臺虎精釀」の日本初上陸となるタップルーム「TAIHU TOKYO」の計画。計画地は歴史情緒漂う風景を残す街、神楽坂。メイン通りである神楽坂通りから一歩入った路地に位置している。周囲には老舗料理店も多く、本計画も元は割烹料理店であり、漆喰壁の瓦葺きという日本建築のリノベーションである。敷地の歴史と特性に敬意を払い、外観は既存の状態を極力生かすことにした。店の構えとなるファサードには、日本の伝統文化である暖簾を新たにデザインし「TAIHU CRAFT BEER」「臺虎精釀」とオリジナルのロゴをレイアウトすることで、欧米で楽しまれてきたクラフトビールが台湾で独自の発展を遂げ、日本の伝統的な街並みが残る神楽坂に出現したことを象徴している。内部はクラフトビールを最大限に楽しめる空間にするため、1階中央にステンレス製のミニマムなビアサーバーをデザインした。タップから注ぎ出るフレッシュなオリジナルビールをカウンター越しに眺められるよう、サーバーをとり囲むように大きなコの字型のビアカウンターを計画している。「神楽坂のビアバー」というコンテキストから、敷居の高さを感じさせないよう、アートディレクタ−が自ら手がけたイラストや暖簾を配置した。アイコニックなグラフィックを空間に混ぜ込むことで、クラフトビールのカルチャーをより先進的なものへと位置付けると共に、空間に遊び心と柔らかさを付加している。2階は台湾の屋台のようなイメージで、現地に訪れた気分で気軽 にクラフトビールと台湾らしい食事を楽しめる空間とした。現地の食堂でよく目にするタイル貼りの空間が無機質になりすぎないよう、既存店にあったサッシの障子を黒く着色して再利用し、バランスをコントロールしている。金属製の食卓は台湾から取り寄せ、現地のエッセンスを取り入れた。台湾の食文化と大地の恵みであるクラフトビール、日本の伝統が溶け合う空間デザインを目指した。(松盛真衣/松盛真衣建築設計事務所

 

「TAIHU TOKYO」
所在地:東京都新宿区神楽坂4-4 河庄ビル1、2階
オープン:2021年9月
アートディレクション:糟谷義人
設計:松盛真衣建築設計事務所 松盛真衣
ビアシステム:ラフインターナショナル
施工:フェローズ
クリエイティブディレクション:A-STUDY
床面積:1階57.12㎡ 2階61.92㎡
客席数:1階28席 2階36席
Photo:菊池貴之

【内外装仕様データ】
床:既存磁気質タイル貼り オーク古材フローリング貼り(ギャラップ) モルタル金ゴテ仕上げ
壁:AEPパテムラ仕上げ 陶器質タイル貼り(サンワカンパニー
天井:AEP
その他:家具(セイアローズ

 

 

 

 

糟谷義人
アートディレクター、グラフィックデザイナー。1978年愛知県生まれ。名古屋芸術大学デザイン学科卒業。クリエイティブスタジオ「SAMURAI」を経て2021年独立。ブランディング、VI・CI、ビジュアル開発を中心にプロダクト・空間・映像など幅広いジャンルで活動。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)正会員。主な仕事/ヤンマー、今治市(iiimabari)、ワイマラマジャパン、慶應義塾大学ラグビー部、ABLE&PARTNERS、D&Dホールディングス、GLP ALFALINK、 SAMURAI INCUBATE、FLAT HACHINOHE、IZAC、楽翠亭美術館、横井珈琲のシンボルマークデザイン。スーツセレクト、中村芝翫襲名披露公演、青木酒造300周年記念ボトルのグラフィックワーク。今治タオル本店、グローブライド D-VEC表参道店、NAOKI TAKIZAWA FITTINGROOM、TAIHU TOKYO神楽坂店のサイン・空間アートディレクションなど。受賞歴/ADCグランプリノミネート、富山ADCグランプリ、THE ONE SHOW Melit、日本パッケージ大賞 入賞、JAGDA賞・TDC賞入選 など。

松盛真衣/松盛真衣建築設計事務所
アーキテクト。1986年大阪府生まれ。2010年青山製図専門学校建築設計デザイン科卒業。有限会社遊空間設計室を経て、2018年一級建築士事務所 松盛真衣建築設計事務所を設立。住宅設計を中心に、ホテル、店舗、オフィス、家具デザインなど幅広い分野で建築設計及び空間デザインを手掛ける。近年では、コロナ禍でのライフスタイルの変化を柔軟に受け止め、新しい住まい方や働き方に合わせた空間の提案も行なっている。

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