Cycle & Cycle 寧波1号店

人と街、環境的な“美しい循環”を生む空間とマテリアル

ベーカリーブランド「Cycle & Cycle」からの依頼で、中国・寧波市での1号店の設計を手掛けました。外観では、このブランドのイメージをこの街の特質と関連付けたいと考え、ファサードに連続した曲線のデザイン言語を取り入れて、寧波という水の都市の優雅な雰囲気に共鳴させています。透明感のある外観を通じて、店舗と都市を融合させるイメージでデザインしました。流動的で柔らかな曲線と開放的な外観は、周囲の街並みに店舗の活気のある表情をもたらしています。
店内では、柔らかく丸みを帯びた「Pod(ポッド)」と名付けた空間を店の前面に配置。パンの陳列やレジの機能をポッド内に統合しています。来店者はポッドに入り、パンを選んで会計を済ませ、ポッドから外の座席エリアに移動します。ポッドの内外を人が行き来することで、店内における空間体験がより豊かなものになります。同時に、ポッドは来店者の動線を整理する重要な要素であり、購入する顧客と、直接席に座る顧客という2つの異なる目的を持つ顧客の動線を区別し、お互いに干渉しないように考慮しています。また、ポッドは店内と屋外の視覚的なアクセントとして機能し、「Cycle & Cycle」ブランドに関連するマルチメディア画像をポッドの外側に投影できるよう、上部に投影機を設置しました。これによりブランディング上の動的な媒体であると同時に、店舗と消費者とを結ぶタッチポイントにもなっています。その他、店内の各所において、温かく、シンプルかつナチュラルで有機的なスタイルを受け継ぎ、広い範囲に淡い色合いのセメントと木材を用いて、シンプルで快適な空間を生み出しています。さらに、白い屋外用ペイントと白いストライプ状の石材の組み合わせは、中庭の雰囲気をより豊かにしています。中庭の床には、灰色ウォッシュストーンを採用し、室内と屋外の境界を緩やかにつなげました。
私たちは、空間デザインを通じて「Cycle & Cycle」の環境への配慮を発信することを目指しました。パンの製造過程で生成される卵の殻は、腐敗する前に利用することでメタンガス排出を大幅に減少させることができます。そのため、私たちは手作りレンガ製造メーカーと協力し、廃棄物の卵の殻を回収・洗浄・粉砕し、卵の殻を用いたレンガの製造を研究しました。廃棄されるはずだった卵の殻が、手作りレンガの色合いとディテールを豊かなものにしています。パンの生産廃棄物を、パン屋の象徴的な素材に転用する試みにより、「Cycle & Cycle」のブランド名と同じく、私たちがデザインの観点からこの「美しい循環」に寄与できたことを嬉しく思っています。(田少寅/謎舍設計工作室、文責BAMBOO MEDIA)

 

「Cycle & Cycle 寧波1号店」
所在地:中華人民共和国浙江省寧波市鄞州区大步街
オープン:2023年6月
設計:謎舍設計工作室 田少寅 曾煜娴 黄莹 霍暁芳 曾煜婷 王勇鋒 程鹏
面積:230㎡
Photo:北京鋭景撮影 広松美佐江 宋昱明


田少寅/謎舍設計工作室
2009年、建築家・高松伸の指導のもと京都大学大学院で建築設計の修士課程で学ぶ。2014年の帰国後、建築・空間デザイン事務所Nazodesignを設立。建築デザイン、インテリアデザイン、プロダクトデザインを専門としながら、ホテル、サービス・小売、ギャラリー、不動産開発、住宅、オフィス、学校などさまざまな分野のプロジェクトを手掛ける。「さまざまなプロジェクトにおいて、新しい洞察力と考え方でデザインする」ことを目指す。「シンプル」の力を信じ、シンプルかつエモーショナルな作品を作ることを心がけている。

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