HOTEL SOSEI SAPPORO M GALLERY

北海道の地に根付くフロンティアスピリットを体感するホテル

かつて未開の地であった北海道は、明治初期に開拓使を札幌に開庁し、御雇外国人を招き入れて世界の英知を結集させ、文明開化が急速に進んでいった。その中で開拓使に雇われていたアメリカの化学技術士が、北海道内の地質調査時に野生ホップを発見し、現在のビール産業へと発展していった歴史がある。
「ホテル創成札幌Mギャラリー」は、国内で第1号の本格的なビール工場「開拓使麦酒醸造所」の跡地でもある、現・サッポロファクトリーの敷地内に計画され、札幌の過去と未来を繋ぐ新しい拠点として、地域の更なる発展に繋がる存在となる事を目指している。インテリアデザインにおいては“フロンティアスピリット(開拓使の精神)“をメインテーマに掲げ、札幌の街の発展の中心人物でもある“開拓使”と、その中の事業の一つでもあるビール製造のキーマンである“ブラウマイスター”に焦点をあてた。彼らを物語の主人公に据え、時代を駆け抜けていく当時の情熱と高揚感、近代化の影響を受けての“和と洋、過去と未来が入り混じる芸術性を持ったカオスさ”をサブリミナル的にエリア毎に展開させていきたいと考えた。その他にもビールの原料となる麦、ホップを始め、香水の原料とされていたハナマスの花やラベンダーなどの植物、この地ならではのマテリアルから生き物まで、開拓使の時代の諸産業で欠かせなかった北国の豊かな自然を、各所のプロダクト、グラフィック、カラースキーム、アートワークにアイコンとして取り入れ、新たな解釈で環境づくりを行なっている。
まず、エントランスに入ると、ビールの原材料であるホップをモチーフにしたアートピースがゲストを出迎え、ストーリーの始まりを華やかに象徴する。ロビー空間では、日本の古き良き建築技法に西洋の優美な建材をブレンドさせ、開拓村の建造物を切り取ってモダンデザインに置き換えて再構築させた。その他にも、地域の魅力に出逢える書籍や、開拓使や御雇外国人達が海外から取り寄せた舶来品をイメージしたコレクションに囲まれた、当時の社交場での情景を思い描ける演出を行なっている。
オーセンティックに設えられたバーラウンジでは、ビールの醸造窯を思わせるユニークなフォルムの暖炉を中心に、リビングの様に寛げるシーティングやビールセラーなどが配置される。様々なアートフルなデザインエレメントに囲まれた空間は、芸術性の中に心地良さをもたらす。
ダイニングは、本場ドイツに渡航してビール製造を学ぶ日本人青年の葛藤と、帰国後のビールづくりに対する情熱やプロセスをイメージしてデザイン。ブルワリーから着想を得た、連続するアーチのインスタレーションの中に、食材で彩られたショウキッチンやビール瓶による光壁、そしてダイニングが浮かび上がり、幻想的かつタイムレスな時が過ごせる食空間を目指した。
スーペリア、デラックス、スイートを有する客室においては、開拓使の邸宅に招かれたシーンを切り取って環境づくりを行なっている。華やかさがありながらも、和と洋のスタイルが入り混ざる独創的な設えに加え、開拓時代の建造物・インテリアに用いられた技法や造形、テキスタイルなど、各プロダクトに現代的に変換して取り入れ、ゲストの旅の高揚感を盛り上げ、本質的な居心地の良さを生み出す。
“フロンティアスピリット”が根付くこの地にて、「ホテル創成札幌Mギャラリー」が、当時のエモーショナルなシーンをユニークな芸術的表現で体現出来る、唯一無二の存在となることを願っている。(藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW

 

「HOTEL SOSEI SAPPORO M GALLERY」
所在地:北海道札幌市中央区北2条東3丁目 サッポロファクトリーフィットネスクラブ 西館
オープン:2024年1月30日
設計:DESIGN STUDIO CROW 藤本泰士 末木なな子 劉 敬麒
床面積:5374㎡(共用部1863㎡、客室3511㎡)
客室数:118室
Photo:ナカサ&パートナーズ

【内外装仕様データ】
床:磁器質タイル貼り(長江陶業) フローリング貼り(ウォールナット特注色/ボード) 特注カーペット敷き(スミノエ) モザイクタイル貼り(名古屋モザイク工業
壁:凝灰岩貼り(札幌軟石/辻石材工業) 織物クロス貼り(インターファブリックス) ビニルクロス貼り(サンゲツ東リ) アンティークミラー(VH)、リブパネル貼り(サカイ
天井:特殊左官仕上げ(プラネットジャパン) 指定色EP塗装(ZYCC) ビニルクロス貼り(サンゲツ) SUSブロンズ色水面パネル(長田通商
家具・什器:人造大理石(アップワード) カラーガラス オーク無垢材染色 スチールブロンズ色指定色ウレタン塗装(特注色)
その他:ビールインスタレーション壁(オーナー支給+ZYCC) 暖炉煙突/銅硫化いぶし仕上げ(ZYCC


藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW
1983年、愛知県生まれ。10代から三重県に移り工務店に就職。現場作業員として様々な経験を積む。その後、名古屋のデザイン学校を卒業後、上京して2005年から株式会社スーパーポテトに勤務。2009年からハーシュ・ベドナー アソシエイツ(HBA) 東京オフィスに勤務。その他2社のデザイン事務所勤務を経て、2013年にDESIGN STUDIO CROW設立。現在は全国各地のホテルプロジェクトや高級業態の飲食店など、多くの商業空間を中心に手掛けている。

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