インセンスを五感で体感する素材と空間
文化元年創業、薫物線香を扱い200余年の歴史を持つ企業の提案するインセンスブランド「ICHIKŌ ICHIE」。同ブランドの大阪・阪急三番街店のリニューアルオープンの計画です。調香によって良い香りを作り出すだけではなく、原料となる天然香木や精油などの素材そのものの持つ香りを活かすというブランドコンセプトに通じるよう、内装には天然石や左官といった自然素材や手仕事による仕上げを採用しています。店舗中央に配置した什器は、ひとつの石でも様々な石肌や色味を持ち、また、加工・仕上方法ごとに異なった表情となる本小松石を用い、気分や場所・時間の移ろいなどによって変化するインセンスの香りを表現しています。分割して設置することによって運搬・搬入や床荷重への対応を行いつつ、より繊細な雰囲気の演出へとつなげています。シンメトリーの計画とするなど、店内を構成する要素をなるべく整理することで、色とりどりの商品パッケージを際立たせると共に、阪急三番街という常に人通りの多いロケーションにありながらも集中して香りを聞くことができ、五感でインセンスを体験できるような空間を目指しました。(坪井秀矩/坪井建築設計事務所)
「ICHIKŌ ICHIE」
所在地:大阪市北区芝田1-1-3 阪急三番街南館1階うめ茶小路
オープン:2023年4月30日
設計:坪井建築設計事務所 坪井秀矩
設計協力:デザインオフィステンダー 大木裕介
クリエイティブディレクション:balance
石什器:竹林石材店
左官:SYMBOL
照明計画:モデュレックス
施工:オクト
床面積:32.65㎡
Photo:ad hoc 志摩大輔
【内外装仕様データ】
床:既存スラブの上磁器質タイル貼り(92-YS102/国代耐火工業所)
壁・天井:PBt12.5下地左官仕上げ(SYMBOL)
家具・什器:カウンター/St.PLt3.2焼付塗装 左官仕上げ 石什器/本小松石(竹林石材店) 壁面什器/St.PLt3.2焼付塗装
坪井秀矩/坪井建築設計事務所
1983年奈良県生まれ。2011年坪井建築設計事務所設立。住宅等の建築設計から、飲食店やクリニック・オフィス等のインテリアデザインを手がける。華美な装飾を行うのではなく、様々な条件や要素を整理し最適解を導き出すことを主眼に設計を行う。